優れたタイポグラフィはテキストを読みやすくし、その内容の理解を助けてくれます。では「読みやすさ」を実現するためにはどのような点に注意すべきでしょうか。

タイポグラフィには読みやすさに関わる概念として「レジビリティ」と「リーダビリティ」というものがあります。大雑把にまとめると、レジビリティは「読み間違いがないこと」、リーダビリティは「快適に読めること」を意味します。この記事ではこれらの用語を解説しながら、ウェブデザインで読みやすさを高めるにはどのようにすべきかについて考察します。

レジビリティ

レジビリティ(legibility)は文字が正しく判別できるかどうかを意味します。「あ」の文字を間違いなく「あ」として読めるかどうか、という観点です。訳語としては「判別性」などがあるようです。そもそも文字が判別できなければ読みやすさも何もありませんので、レジビリティは読みやすさの前提条件と言えます。

ウェブデザインにおいてレジビリティを高めるにはまず、フォントの選択が重要です。例えば大文字のIと小文字のlと数字の1など、紛らわしい文字が区別しやすいかどうかなどに注意します。また、見出しなど大きなサイズで使われることを想定したフォントをキャプションなど小さなサイズで使うと、細部がつぶれて判別が難しくなる場合があります。用途に合ったフォントを選びましょう。

ナビゲーションやボタンなど、ユーザーが操作するインターフェースではとくに高いレジビリティが求められます。読み間違いがなく、内容が一目で伝わるものであるべきです。より判別しやすくデザインされた「UDフォント」を選択肢として検討してもよいかもしれません。

また、文字サイズや背景とのコントラストなどもレジビリティに影響します。WCAG 2.0解説書の「ガイドライン 1.4 判別可能」などが参考になるでしょう。そのほかテキストシャドウなどによる装飾が判別を妨げるケースもあるので、注意したいところです。

リーダビリティ

リーダビリティ(readability)はテキストが読みやすいかどうか、という指標です。レジビリティが文字自体が読めるかどうかに注目したものであるのに対し、リーダビリティは文字列としての読みやすさを評価するものと考えられます。訳語としては「可読性」が当てられることが多いようです。一般に「読みやすさ」と言ったとき、多くの場合はリーダビリティを指すことが多いでしょう。

ウェブデザインでもっともリーダビリティを求められるのが、ページの主要な内容となる本文(ボディテキスト)です。本文の要件として、心地よく読めること、長く読んでも疲れにくいこと、内容の理解をさまたげないことなどが挙げられます。文字サイズや行間のほか、字詰め(行の長さ)や行揃えなど、様々な要素がリーダビリティに影響します。

また日本語フォントは全角ベタ組み――つまりプロポーショナルメトリクスにせず、字間をアケたりツメたりしないときにもっとも読みやすくなるようデザインされています。これらのスタイルの調整には慎重になるべきです。とくに長文では全角ベタ組みを基本とするとよいでしょう。

内容のリーダビリティ

以上はタイポグラフィにおけるリーダビリティ、つまり「体裁」としての読みやすさについてですが、「内容」の読みやすさをリーダビリティと言う場合もあります。小説のレビューで「リーダビリティが高い」などと言う場合、文章構成や言葉の選び方が巧みである、という意味で用いられていることが多いようです。また言語や教育などの領域では、テキストを語彙や文法の難易度などから解析し、リーダビリティを数値化したりもするそうです。

参考文献